概要
- 場所
- バービル県ヒッラ近郊、バグダッドの南約85km
- 最盛期
- ネブカドネザル2世の治世(前605〜前562年)
- 世界遺産
- 2019年にユネスコ世界遺産に登録
- 所要時間
- 2〜3時間
- ベストシーズン
- 10月〜4月
ベルリンのペルガモン博物館で、青い釉薬レンガのイシュタル門を見たことがある方も多いかもしれません。では、その門が本来建っていた場所はどうなっているのでしょうか。イラクのバビロン遺跡は首都バグダッドの南およそ85kmにあり、行き方さえ押さえれば半日で見学できます。行列道路を歩き、2,500年以上前に据えられた雄牛と竜のレリーフを目の前で見ることができます。
この記事では、バビロン遺跡の場所、歴史の要点、見どころ、バグダッドからの行き方、ベストシーズン、そして現地ガイドとして私がいつも旅行者にお伝えしている注意点を、順番に整理して紹介します。
バビロン遺跡はどこにある?
バビロン遺跡はイラク中部のバービル県、ユーフラテス川のほとりにあり、現代の都市ヒッラ(Hilla)のすぐ郊外に位置します。バグダッドからは南へ約85km、車で1時間半ほどです(交通状況によって前後します)。
2019年にはユネスコの世界遺産に登録されました。何世紀にもわたり古代世界で最大級かつ最も影響力のある都市だった場所です。敷地は広く、当時の城壁、発掘エリア、近代の復元建築が並んでいるので、見比べながら歩くのがおすすめです。
バビロンの歴史をざっくり
ハンムラビ王と最初の繁栄
バビロンは紀元前2千年紀の初めにはすでに重要な町でしたが、紀元前18世紀のハンムラビ王の時代に大きな都となりました。「目には目を」で知られるハンムラビ法典は黒い石碑に刻まれ、現在はパリのルーヴル美術館に展示されています。
ネブカドネザル2世と現在の遺跡
最も有名な時代はそれから千年以上後の新バビロニア時代、特にネブカドネザル2世(在位:紀元前605〜前562年)の治世です。今日目にする遺構の多くは、巨大な城壁、王宮、イシュタル門、行列道路など、彼の建設事業によるもの。遺跡のレンガには、王の名を記した楔形文字の刻印が残るものも少なくありません。
ペルシア、ギリシア、そして静かな衰退
紀元前539年、バビロンはペルシアのキュロス大王の手に平和的に渡りました。その入城を記した「キュロス・シリンダー」は1879年にここで発見され、現在はロンドンの大英博物館が所蔵しています。紀元前323年にはアレクサンドロス大王がバビロンで亡くなりました。大王はここを帝国の都の一つにする計画を持っていたとされます。その後、都市は少しずつ重要性を失い、やがて放棄され、日干しレンガの建物は平原へと沈んでいきました。
バビロン遺跡の見どころ
イシュタル門と当時のままのレリーフ
イシュタル門は内城の北の正門で、女神イシュタルに捧げられたものです。青い釉薬レンガで覆われた最も華やかな部分は、20世紀初頭にロベルト・コルデヴァイ率いるドイツ隊が発掘し、ベルリンのペルガモン博物館で再建されました。遺跡の入口には縮小サイズの近代レプリカがあり、当時の色彩をイメージできます。
本当の見どころは、少し目立たないところにあります。門の基礎部分は今も元の場所に残っているのです。壁の間を下りていくと、釉薬のかかっていないレンガで作られた雄牛と、マルドゥク神の聖獣である蛇竜「ムシュフシュ」のレリーフが何列も並び、ネブカドネザルの職人たちが置いたその位置で今も見ることができます。
行列道路
イシュタル門から延びる儀式用の道路で、新年祭(アキトゥ祭)の際には神々の像がこの道を運ばれました。かつて両側の壁はイシュタルの象徴である釉薬レンガのライオンで飾られていました。現在もその一部を歩くことができ、古代の舗装が残る区間もあります。
バビロンのライオン像
遺跡で最も写真に撮られるのが、人の姿を下に組み敷いた大きな玄武岩のライオン像です。制作年代や意味については研究者の間でも議論が続いていますが、何世紀にもわたってバビロンの象徴であり、イラクを代表するイメージの一つになっています。
ネブカドネザルの南宮殿
中庭や玉座の間を備えた王宮は、1980年代に元の基礎の上に大規模に復元されました。壁をよく見ると、古代のレンガ(中には刻印入りのものも)と新しいレンガを見分けることができます。都市のスケールを実感するには最適な場所です。
エテメンアンキ(「バベルの塔」)
宮殿の南には、マルドゥク神の大ジッグラト、エテメンアンキがそびえていました。多くの歴史家が旧約聖書のバベルの塔の物語と結びつけています。現在残るのは基壇の輪郭だけで、雨の後は水がたまっていることもよくあります。見るものは多くありませんが、古代の記録で高さ約90mとされる塔を想像しながら、少し立ち止まってみてください。
空中庭園は伝説?実在?
バビロンの空中庭園は「古代世界の七不思議」の一つですが、バビロンでは確かな考古学的証拠は見つかっていません。別の都市、たとえばニネヴェにあったのではないかと考える研究者もいます。現地ガイドが宮殿近くの「候補地」を案内してくれることもあり、議論がまだ決着していないことを踏まえて聞けば、楽しい話題になります。
バグダッドからバビロン遺跡への行き方
遺跡そのものへ旅行者が使いやすい公共交通機関はないため、ドライバー付きの専用車か、ツアーに参加するのが最も簡単です。バグダッドからは車で約1時間半。途中でいくつかの検問所を通過しますが、イラクではごく普通のことです。パスポートはすぐ取り出せるようにしておきましょう。
現地ガイドと一緒なら、チケット、検問所、時間配分をすべて任せられ、一日のうちで最も光のきれいな時間帯に到着できます。
ベストシーズンと所要時間
おすすめは10月から4月。穏やかで晴れた日が続きます。6月〜9月は気温が45℃を超えることも多く、屋外の遺跡を歩くのはかなり体力を使います。夏に訪れる場合は朝早く到着するようにしましょう。
遺跡での所要時間は2〜3時間が目安です。バグダッドからの日帰りが最も一般的で、夕食にはバグダッドへ戻れますし、そのまま南のカルバラやナジャフへ向かうこともできます。
見学の実用ポイント
- チケット:遺跡の入口で購入します。料金は変わることがあるため、イラク・ディナールの現金を多めに用意してください。
- 服装:歩きやすい靴、帽子、水は春でも必須。肩と膝が隠れる控えめな服装が好まれます。
- 写真撮影:遺跡内では基本的に撮影できます。イシュタル門基礎のレリーフは午前中の光がきれいです。
- ビザ:イラクの入国条件は随時変わります。予約の前に、ご自身の国籍に関する最新の公式情報を必ず確認してください。
- ガイド同行がおすすめ:現地の説明パネルは少なく、解説なしでは多くのディテールを見落としがちです。
イラク旅行の中のバビロン
バビロンは、聖地カルバラとナジャフ、シュメールの都市ウルクとウル、そしてメソポタミア湿地帯といった、イラク中部・南部の見どころと組み合わせやすい場所です。私たちの7日間イラク文化遺産ツアーでは、バグダッドの次に訪れる最初の目的地の一つで、「イラクが文明のゆりかごと呼ばれる理由」を多くの方が実感する瞬間でもあります。時間に余裕があれば、北部も巡る9日間ツアーもあります。
行列道路を案内するとき、私はいつも皆さんに当時のレンガに触れてもらいます。ネブカドネザルの時代に積まれたものだと知ると、街全体の見え方が変わるんです。— Saif
よくある質問
バビロン遺跡はバグダッドからどのくらい?
南へ約85kmで、車で1時間半ほどです。交通状況や検問所によって前後します。
バグダッドから日帰りできますか?
はい。遺跡の見学は2〜3時間なので、バグダッドからの日帰りが最も一般的です。
本物のイシュタル門はバビロンにありますか?
有名な釉薬レンガの部分はベルリンのペルガモン博物館で再建されています。バビロンには入口の縮小レプリカと、雄牛と竜のレリーフが残る門の基礎があります。
空中庭園は今も残っていますか?
残っておらず、バビロンでは確かな考古学的証拠も見つかっていません。ニネヴェなど別の都市にあったとする説もあります。
ベストシーズンはいつですか?
気候が穏やかな10月〜4月です。夏は45℃を超えることが多いので、訪れるなら早朝がおすすめです。
イラク入国にビザは必要ですか?
入国条件は随時変わります。予約前に、ご自身の国籍に関する最新の公式情報を確認してください。